通勤交通費は給与とともに毎月支給する費用ですが、会社として経費処理するときに注意しなければならないポイントがあります。その1つは通勤交通費の非課税限度額です。非課税限度額は公共交通機関、自動車、バイクなどの通勤手段によって細かく限度額が税法で定められています。非課税限度額をこえて通勤交通費を支給すると社員には所得税が課税されることから間違えることがあってはなりません。さらに、非課税限度額は法律改正で変更される可能性があります。直近では2014年10月に改正されました。税法の改正にも注意が必要です。通勤交通費の非課税限度額はいくらか、非課税になる通気交通費の範囲、および交通非課税限度額をこえて通勤交通費を支給するときの経理処理について解説します。
通勤交通費は基本給、残業手当、家族手当などの給与の一部として毎月支給する経費ですが、受け取る社員には総支給額から社会保険料などが控除されて残る金額に所得税が課税されます。社会保険料は給与から控除されるので課税されないことが明確にわかります。しかし、通勤交通費は他の手当と同様に給与に上乗せして支給される手当にもかかわらず社員の所得税を計算するときには控除できる手当です。控除できるのは通勤交通費が原則として課税されない手当だからです。
そのため所得税の計算では他の手当を含む金額から通勤交通費を控除します。これが「通勤交通費の非課税」という意味です。しかし、支給額全額が非課税になるわけではありません。通勤交通費が一定の金額をこえると、こえた金額は課税対象となって控除できません。例えば、通勤交通費の支給額が3万円で非課税の金額が2万円とすると、所得税の計算では2万円しか控除されずに差額の1万円には課税されます。これが「通勤交通費の課税」という意味です。そして、この例では2万円が非課税限度額と呼ばれます。非課税限度額は一律ではなく通勤手段や通勤距離によって区分されて定められています。
なお、ここでの通勤交通費とは、社員が自宅から会社に出社するための費用のことです。業務のための出張に要する交通費や顧客や取引先へ仕事で訪問するときの交通費は含まれません。これらの費用は給与としてではなく一般的には出金伝票によって、都度、または一定期間ごとにまとめて支払います。
通勤交通費は、多くの会社が支給しているので支給しないと法律違反と思われていますが、法律上は支払い義務のない手当です。交通通勤費の全額支給、一部支給、全く支給しないなど会社が自由に決定できます。また、支給金額の算出方法も自由に決められます。なお、会社が自由に決定できるからといって会社都合で勝手に変更して支給額を減額すると「不利益変更」となって認められない可能性があります。また、通勤交通費の非課税限度額は、電車やバスなどの公共交通機関を利用した通勤とマイカーやバイクを使った通勤など通勤手段によって限度額が変わります。正しく計算して源泉徴収しないと税務調査で源泉徴収税額の徴収漏れを指摘されて延滞税と不納付加算税が課されるので注意が必要です。
通勤交通費の非課税限度額は交通手段別に以下のように定められています。
公共交通機関を利用したときに通勤にかかる交通費の非課税限度額は月額15万円です。15万円をこえて支給するとこえた金額には課税されます。
なお、非課税限度額は、最も経済的で合理的な経路と方法によって通勤した場合に認められます。経済的で合理的な経路と方法とは、運賃、時間、距離などが最も安い費用で、最短時間で、最短距離で通勤できる方法のことです。例えば極端な例として、電車やバスで通勤すれば1日片道500円、30分、30キロで会社まで行けるのに、マイカーで高速道路を使ってガソリン代と高速代を加えて費用や通勤時間・距離のいずれか、あるいはすべてで非効率となる通勤方法による費用は非課税になりません。ただし、費用は公共機関を利用するより高額ですが公共機関を利用すると1時間に1本しか運行していない、あるいは最寄りの駅から会社まで徒歩で1時間かかるなどの事由があればマイカーでの通勤でも非課税が認められます。また、公共交通機関を利用してもグリーン車の利用は合理的な通勤方法として認められないので非課税になりません。公共交通機関以外を利用したときの非課税限度額は15万円ではなく別途定められています。
一般的には1カ月の定期代が合理的な費用と判断されるため多くの会社では1カ月の定期代を通勤費として支給しています。しかし、会社として6カ月の定期代として支給することにしても問題はありません。新幹線の利用を認めて通勤交通費として支給するかどうかは会社の判断ですが、税法上は新幹線の利用もグリーン車の利用を除けば非課税です。マイカーであれば認められる場合でも、マイカーの代わりにタクシーを利用した通勤は合理的な通勤方法としては不適当なため非課税は認められません。会社が運転手を雇用してタクシー代わりに利用したときの高速代やガソリン代は経済的で合理的な通勤方法であれば非課税として認められます。ただし、運転手の給与は通勤交通費には含められません。
公共交通機関の利用が不便、あるいは利用できない場合にマイカー・バイクで通勤する場合は、距離によって非課税の上限額が定められています。距離別の非課税限度額は以下のとおりです。距離は通勤するために経済的・合理的なルートを通ったときの距離です。2キロ未満は徒歩が通勤方法として経済的・合理的として非課税限度額が設定されていません。
片道の通勤距離 1カ月当たりの限度額
公共交通機関とマイカー・バイクなどと組み合わせて通勤することが経済的・合理的である場合の非課税限度額は、交通機関の1カ月の定期代とマイカー・バイクなどによる距離に応じた非課税限度額の合計金額です。ただし、その合計金額が15万円をこえる場合は15万円が非課税限度額です。
多くの会社は一般的に非課税限度額を通勤交通費の支給限度額としています。そのため非課税限度額をこえて通勤交通費を支給している会社は少ないと思います。もし、非課税限度額をこえて通勤交通費を支給していた場合は消費税が関係して経理処理は少しだけ複雑な処理が必要です。
支給している通勤交通費を21,600円、非課税限度額を16,200円として説明します。
通勤交通費の16,200円は、通勤のために必要と認められる範囲内であれば、会社の経費としては法人税、消費税税上は全額損金として認められます。ただし、所得税上は非課税限度額が16,200円のため、限度額をこえた分は「給与」となって課税されます。また、所得税上の限度額をこえた分も消費税上は課税仕入れ処理に該当するため以下の処理が必要です。
通勤交通費の課税、非課税とは何か、非課税限度額として認められる通勤交通費の範囲、非課税限度額はどのように設定されて具体的にいくらか、および非課税通勤限度額をこえて通勤交通費を支給したときの経理処理について解説しました。処理を間違えると延滞税と不納付加算税が課せられる可能性があります。本記事を参考に間違いのない処理を行うようにしてください。
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<著者情報>
経費精算システム「J'sNAVI NEO」編集部
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