2020年12月10日に公表された令和3年度税制改正大綱。電子帳簿保存法に関しても、大幅改正が行われる見通しとなりました。こちらの改正内容について、今回と次回の計2回で、「スキャナ保存」の要件に関するところに絞って、ポイントを解説していきたいと思います。
なお、改正内容については、令和2年12月時点で公表された情報をもとにしており、施行までに変更される可能性があることをご留意ください。
これまでは電子保存を開始したい日の3ヶ月前までに承認のための申請が必要でした。
しかしながら、「令和3年度税制改正大綱」において、電子帳簿保存法は改正され、2022 年 1 月から帳簿書類のスキャナ保存に関する事前承認の制度が廃止されました。よって、2022年より申請が不要となります。
これからは電子保存を開始したい日までに電子化運用体制の準備を完了させたうえで、税務署へ「届出書」を提出(これらの手続きについては、現在未確定)することによって、対応が完了となります。
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これまで「特に速やか方式」と呼ばれていた「3日ルール」がなくなり、「業務処理サイクル方式」に統一されました(もちろん最長2ヶ月という話なので、それよりも短い期間でやる分にはOK)。また、自署も不要になったため、領収書であれば、基本的にスマホでサクッと撮影して終わりになりました。
入力機器(スキャン機能)の性能に関しては、平成28年度の改正により、スマホのカメラ機能やデジタルカメラ、ハンドスキャナなどのデジタル機器も入力機器として利用可能になっています。
解像度要件は、【解像度200dpi以上、赤青緑の256階調(24ビットカラー)以上】と定められています。
一般書類については、白黒の256階調(グレースケール)も認められています。
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これまでは、どのようなシステムを利用していたとしても、タイムスタンプ付与は必須でしたが、これからは訂正履歴管理ができるシステムを利用する場合は、タイムスタンプ自体が不要になりました。
改正前では、タイムスタンプが付与されるまでの期間のチェックや、第三者へのタイムスタンプ付与依頼などを行う必要がありました。しかし改正後は、タイムスタンプの付与期間の大幅な緩和と、タイムスタンプ不要条件が統一がされ、より業務負担が少ない運用で電子帳簿保存法に対応が可能となっています。
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適正事務処理要件とは、相互けん制や定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等を指しますが、電帳法としては、これらが求められなくなりました。
つまり、極端な話、書類の受領から電子化までの運用を一人で完結することができ、また事後的な検証も要らなくなったということになります。とはいえ、この後に出てくる「スキャナ不正」によるペナルティも新設されたので、当然ながら何らかの内部統制は構築する必要はあります。
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検索項目が以下に限定されました。
また、取引に関するデジタルデータをダウンロードし、国税庁等の職員に渡すことができれば、検索機能の一部(範囲指定及び項目の組み合わせ検索)が不要とされました。
確かにこれまでもCSVデータをエクスポートして、エクセルで加工という場面が多かったと思うので、あえてシステムの機能としてそこまで要求しないということと思われます。
上記改正は、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類について、適用されます。
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以上、今回は改正点の中でも主に緩和された項目について、そのポイントを見ていきました。
次回は、それ以外の改正内容について、見ていきたいと思います。
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経費精算システム「J'sNAVI NEO」編集部
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