近年、電子帳簿保存法のスキャナ保存制度を導入する企業が増えているといわれています。スキャナ保存制度とはいったいどのような制度なのでしょうか。また、スキャナ保存制度を導入することで、コスト削減のメリットも期待できるといわれています。そこで今回はスキャナ保存制度の基本を解説します。
スキャナ保存制度とは、国税関係書類の紙の書類として受領したものをスキャナなどで電子化してデータとして保存することが認められた制度です。その要件や保存方法が細かに定められています。スキャナで指定の書類を保存したい場合には、このスキャナ保存制度の規定に沿う必要があります。
国税関係書類とは、税法上、保存義務がある決算書類や取引書類のことを指します。主に、帳簿・伝票類、決算書類、取引関係書類の3種類に分かれます。具体的には、賃借対照表、損益計算書、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納表、領収書、請求書、見積書、契約書、注文書などが相当します。
スキャナ保存の要件等、詳細に関してはその後、令和3年、令和5年にも法改正が行われていますので、最新の情報については下記の関連コラムも併せてご覧ください。
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このスキャナ保存制度は、ここ数年で導入企業が非常に多くなっています。国税庁が平成29年度に発表した「電子帳簿保存法に基づく電磁的記録による保存等の承認状況※」によると、税務署へのスキャナ保存申請の累計承認件数は、平成26年度が152件だったところ、平成27年度が380件、平成28年度が1,050件、平成29年度が1,846件となり、平成26年度から3年で約12倍に増えています。この急激な増加にはどのような背景があるのでしょうか。
※出典:国税庁ホームページ
考えられる要因としては、度重なる要件緩和で、導入しやすくなっていることや「働き方改革」による長時間労働の是正のために、業務効率化が浸透していることなどが考えられます。
要件緩和について詳しくみていきましょう。電子帳簿保存法は、平成27年、平成28年と2年連続で改正が行われ、スキャナ保存に関しても要件が大幅に緩和されました。主な要件緩和の内容としては、平成27年度には3万円未満のものに限ってスキャナ保存が認められていた基準が撤廃されたことや、白黒での保存が可能になったこと、電子署名の付与の撤廃などがあります。平成28年度では、スキャナのみではなく、スマートフォンやデジタルカメラなどのカメラなども利用可能となりました。これらのことから、導入のハードルが下がったと考えられます。
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スキャナ保存制度を自社に導入した場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。その主なメリットをみていきましょう。
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ペーパーレス管理が可能になったことから、保管コストが削減されることが企業にとっての大きなメリットといえます。その紙の出力におけるコスト、輸送、倉庫への保管コスト、そしてそれぞれの手間のコストも削減されます。
監査においてもメリットがあります。例えば内部監査では、伝票を監査して証憑を探す必要がありましたが、スキャナ保存制度で電子化保存しておけば証憑と帳簿がすでに紐づけされているので検索が容易になりました。これにより業務効率化につながると考えられます。
平成28年度の改正で、スマートフォンでの撮影保存が認められたことから、より手軽になりました。これも業務効率化、時間削減につながると考えられます。
以上のように、スキャナ保存制度を導入することによるメリットは多いですが、一方でデメリットも存在します。主なデメリットをみていきましょう。
スキャナ保存制度を導入するにあたっては、要件を満たすため、スキャナやデータ保管用のサーバー、適切なシステム等の準備が必要となり、導入コストがかかります。また、これらの設備投資には、初期費用だけでなく、メンテナンス費用も発生するため注意が必要です。
スキャナ保存制度を適切かつ効果的に運用するためには、全社員がシステムや運用ルールについて理解し、正しい方法で利用する必要があります。このためには、社内研修や教育が必要となり、そのための時間や手間がかかるという問題があります。
スキャナでデータをデジタル化する際、原本が不要となる場合もありますが、電子帳簿保存法では、一定の条件を満たさなければ原本の廃棄は認められません。また、データ改ざんなどの不正が起きる懸念もあり、法令に違反した場合、罰則が科せられるリスクがあります。
スキャナ保存制度は、これからますます企業にとって身近な制度になっていくことしょう。導入後は、細かな規定に対していかに対応するか、要件を満たすかということが重要です。
<著者情報>
経費精算システム「J'sNAVI NEO」編集部
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