事業を行うと税金のほかにさまざまな費用が発生します。事業に関連する費用は原則確定申告で必要経費として収益から控除できます。しかし税金には経費で落とせる税金と落とせない税金があります。自動車税も税金の1つですが経費として落とせるのか、経費で落とせる場合、使用する勘定科目や仕訳処理について解説します。また車を事業と家事で併用しているときの経費で落とせる金額を計算する按分方法について、および知っておかないと損をする自動車税に関する知識まで幅広く解説します。
自動車税は結論から言うと経費で落とせます。基礎的なことですが自動車税とはそもそもどのような税金でしょうか?自動車税についてしっかり理解しておきましょう。
自動車税とは、毎年4月1日時点の車検証上の所有者に対して課税される税金のことです。廃車にしたり人に譲ったりした場合、抹消登録をしないかぎり車検証上の所有者に課税され続けるので注意が必要です。
自動車税は以下のような種類に分かれて税額が設定されています。
その他にも以下の分類で自動車税が設定されています。
ここでは、事業に多く利用されている乗用車と四輪の軽自動車に関する自動車税について紹介します。
課税額は普通乗用車の場合、総排気量の違いによって自家用の場合が29,500円から111,000円まで10段階に分かれています。また営業用の場合は自家用と同じ総排気量の区分で8,600円から46,800円まで10段階に分かれています。
軽自動車には、総排気量の区分はなく乗用と貨物用に分かれ、それぞれが自家用と営業用に分かれて自動車税が決まっています。
2015年4月1日以降に新車新規登録された車から乗用(自家用)は10,800円、乗用(営業用)は7,200円、貨物用(自家用)は5,500円、貨物用(営業用)は3,800円に変更されました。変更前の軽自動車税は、乗用(自家用)は4,000円、乗用(営業用)は3,000円、貨物用(自家用)は5,000円、貨物用(営業用)は3,800円です。2015年3月31日以前に新規登録された軽自動車は変更前の自動車税です。中古車の場合、2015年4月1日以降に車検をして登録されれば変更後の自動車税で課税されます。
なお、自動車税の金額は毎年5月頃に自治体から自動車納付書が送付されてくるのでそれを見ることで確認できます。普通乗用車は都道府県、軽自動車は市区町村から送付されてきます。
環境に良いエコカーは燃費基準の達成度により自動車税が約50%から75%減税されます。一方、新車登録からガソリン車は13年、ディーゼル車は11年を経過すると環境負荷が増大するとして自動車税・自動車重量税が約15%増税されます。なお、環境性能に優れたエコカーや交通機関として使用されるバスなどは増税の対象外です。
車を購入すると自動車取得税、自動車重量税が課税されます。これらの税金も経費で落とせます。
個人事業では車を事業と家事の両方に使用することが多く行われています。このとき自動車税の全額を経費で落とせません。事業と家事で使用する割合を合理的な按分方法で分けて処理しなければなりません。以下の3つの基準からいずれかを選択して按分します。
車を事業に利用するときに運行記録表を作成します。運行記録表には目的地(地名または訪問先名などを記載)、利用者名、利用日、利用時間(出発時間・帰着時間)、走行距離(出発時の走行メータと帰着時の走行メータを記載し距離を計算)を記載します。これにより事業に利用した走行距離、利用回数、利用時間を把握できます。
按分する基準として3つのなかでは走行距離が一般的に使われています。車の総走行距離から事業で利用した走行距離を控除することで簡単かつ合理的に按分できるからです。利用回数や利用時間で按分するときは家事で車を利用するときに同じように利用状況を記録しなければ合理的な按分ができないので面倒です。総走行距離が年間2万キロで事業に使用した走行距離が1.6万キロであれば、自動車税額の8割を経費で落とせます。
自動車税を経費で落とすときに使用する勘定科目は一般的には「租税公課」です。事業に車を多数使用するなどして車関係の費用をどの程度経費として使用しているかを簡単に分かるようにして経営管理に役立てるためには、「車両費(または車両経費)」も勘定科目として使えます。「車両費(車両経費)」勘定で処理できるのは以下の費用が含まれます。なお「租税公課」勘定を使用するときは、税金以外の自動車関連で発生するさまざまな経費はこの勘定科目では処理できません。
勘定科目は、固定されたものではなく事業の内容や経費をどう捉えるか、あるいは経費をどう管理するかなどを考慮して、経営者(経理責任者)がある程度は自由に選べます。例えば、上記のガソリン代は車両を使用するために発生する費用と考えて、一般的には「車両費(車両経費)」に会計処理をします。
しかし、車は社員が営業で交通機関の代わりに車を使用すると考えれば「旅費交通費」勘定で処理しても問題ありません。同様に車の修理も「車両費(車両経費)」で処理しないで、他の機械の修理と同じ「修理費」の勘定科目で処理もできます。ただし、勘定科目はいったん決めた場合は継続して同じ勘定科目を使い続けるという会計処理の原則があるため変更は特別な理由がない限り継続して使用しなければなりません。
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課○○円 | 現金○○円 |
または車両費(車両経費) |
クレジットカードを使って支払いをした日
借方 | 貸方 |
---|---|
租税公課○○円 | 未払金○○円 |
または車両費(車両経費) | |
決済手数料○○円 |
預金口座からクレジットカード代が引き落とされた日
借方 | 貸方 |
---|---|
未払金○○円 | 当座預金○○円 |
または普通預金 |
自動車税を5万円として、事業に6割、家事に4割を利用した場合に現金で自動車税を支払ったときは以下の仕訳を行います。
借方 | 貸方 |
---|---|
事業主貸20,000円 | 現金50,000円 |
租税公課30,000円 | |
または車両費(車両経費) |
自動車税や住民税などの地方税、および所得税や法人税などの国税においても期日までに納付しないと地方税では加算金・延滞金、国税では加算税・延滞税という税金が追加で課税されます。しかし、この加算金(税)・延滞金(税)は経費で落とせません。なお社会保険料の加算税・延滞税は経費で落とせることも覚えておくと良いでしょう。
普通自動車の自動車税は年度の途中で廃車または売却すると自動車税が月割りで還付されます。しかし軽自動車税は還付されません。自動車税は4月1日の所有者に課税されるため軽自動車の廃車または売却を4月1日に行い、新車または中古車の購入を4月2日にすると自動車税を1年分節約できます。もし、逆に軽自動車を4月2日に廃車または売却を行い、新車または中古車を4月1日に購入すると1台しか使用しないのに自動車税だけは2台分を支払わねばならなくなります。
自動車税は毎年4月1日に所有している所有者(名義人)に課税されます。ローンで購入すると完済するまでは車の所有権はローン会社にあります。しかし、ローン購入の場合は、自動車登録証(車検証)の使用者が所有者となるため自動車税はローン購入者に課税されます。
軽自動車の自動車税は、市区町村が自動車税を標準税額の1.5倍にすることが認められています。そのため最高と最低の市区町村で最大1.5倍もの大きな差がつく可能性があります。
広い意味での自動車税の1つ自動車取得税は50万円以下の車には課税されません。中古車を購入する場合、50万円以下の車両価格の車を購入することで自動車取得税を節約できます。また、自動車取得税は装備品の価格を含んで自動車価格に課税されます。そこで、装備品を付けない仕様で購入し、後から装着することで装備品の分だけで自動車取得税を節約できます。なお、自動車取得税は消費税が10%に増税された段階で廃止の予定となっています。
購入した車を何らなかの理由で1カ月以内に返品できた場合、納付した自動車取得税は全額還付されます。1カ月以上を経過してからの返品では普通自動車の場合は経過した月数分の自動車税が還付されません。軽自動車の場合、1カ月を経過すると自動車税は全額還付されません。
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